人間の行動理論〜こころの心理学〜

 

人間の行動理論

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  【こころの病気】-人間の行動理論

人聞の行動は、どのようにして起こるのか。物を認識したり、覚えたり、考えたりする機能が、今までの経験によって学習した結果、行動として結びつくのです。
人間の知的活動を分析する「認知心理学」とは、物を認識したり、覚えたり、思い出したり、考えたりというさまざまな活動は、すべて認知心理学の領域とされます。

認知心理学は、1950年代に登場した比較的新しい分野の心理学です。ここでいう認知とは「知覚、記憶、思考など、人間の頭の中で行なわれる心的機能の総称」と定義されています。簡単にいえば人が行なう知的活動のことです。

認知心理学の特徴は、人間を複雑な情報処理システムと考えていることです。いわば人の心を、脳というコンピュータで作動しているソフトウェアと捉えているようなものです。
そして人間の心の中で情報が伝達したり、記憶、処理されるプロセスを解明するとともに、その働きを目に見える形でモデル化することを目指しています。また、記憶の研究などと並んで、人が推論を働かせる過程の分析も認知心理学の重要なテーマのひとつとなっています。

無意識の認知について

カクテルパーティ効果
今あなたは駅のホームで誰かと話をしているとします。場内アナウンスや周りの人の話し声が多少大きくても、あなたは相手との会話に集中しているのであまり気にならないはずです。
つまり、こういう場合に私たちは一種のフィルターを無意識に働かせて、関心のある情報以外はシャットアウトしているのです。こうした無意識のうちに行なわれる情報処理を「カクテルパーティ効果」と呼びます。
ただし、本人が意識していない情報が、完全に遮断されているわけではありません。車の騒音が激しい道ばたでも、名前を呼ばれれば、大半の人は気づくはずです。つまり、私たちは意識していない情報でも、その内容が重要な情報かどうかを、無意識のうちに処理しているといえるのです。

フライミング効果
認知心理学では、あるひとつの概念に関連があるものはその近辺に、関連の薄い概念は遠くにというように、人間の記憶はさまざまな概念や知識がネットワーク状に配置されていると考えられています。そして、それぞれの概念は、リンクによって結ばれているとしています。
ところが、先に入ってきた情報の処理のしかたによって、後から入ってきた情報の処理速度に影響があることが証明されています。これを「フライミング効果」といいます。
例えば、スライドなどで、まずプライム(刺激語)を見せ、次にターゲットとなる文字を見せて、関連性があるかないかの判断にかかる時間を測定する「語彙(ごい)決定課題」なる実験があります。
この実験により、ターゲットがプライムと関連のある言葉のほうが反応時間が短く、判断ミスも少ないことが立証されています。
つまり、人間はひとつのプライムを処理すると、無意識のうちにそれに近い概念を活性化させていて、さらにその活性化はリンクを伝わってネットワークを広げ、その結果、活性化されだ概念は、ほかの概念に比べて処理されやすくなっているのです。

では、認知された結果がどのように行動へと結びつくのでしょうか?
私たちが日常生活の中で行なっているありとあらゆる行動は、そのほとんどが今までの経験によって学習した結果です。すなわち、過去に経験し学習した結果が行動へと結びつくのです。経験学習が行動に影響を与えるということです。

例えば、パスに乗り遅れそうな場合に走るのは、走ったら間に合ったという過去の経験があったからで、床に水をこぼしたら雑巾で拭くのも、そのままにしておいたら滑って危険だということを過去の経験で知っているからです。このように、経験によって行動を変えること、また経験の結果によってある行動が起きることを「学習」といいます。

また、失敗を繰り返しながら試行錯誤の中で学ぶのではなく、他の人の行動を見て学習することを「観察学習」といいます。小さな子供が、親や兄弟の真似をするというのも、この観察学習によるものです。一般に年齢が高くなるにつれて、他の人の行動結果に対する理解力や予測力も発達していくため、観察学習は認知能力の発達に深く関係しているといえます。



さて、ここで重要な学習活動には
「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2通りのやり方があります。

外発的動機づけ
 例えば、褒められたいために、あるいは叱られるのが嫌で宿題をやるような場合。

内発的動機づけ
 自分の興味や関心のあることに、時間も忘れて没頭している場合。

学習への動機づけにどちらが効果的かは一概にいえませんが、長い目で見ると内発的動機づけのほうが効果があるといえるでしょう。賞罰を与えて学習させると、その賞を得ることのみを重視する恐れがあるからです。また、報酬を受け取った後の、自発的な行動への結びつきも弱くなります。

発達心理学者のハントは、子供は生まれながらにして、珍しいことを見たり調べたりする知的好奇心を持っているといいます。といっても、それが内発的動機づけになるまでには時間がかかります。
外発的動機づけによって宿題をやるうちに、驚きや疑問、好奇心によって内発的動機づけへと変化していくのが望ましいでしょう。 こうした内発的エネルギーは、外発的動機づけに比べて持続性が高いといわれています。好きなことは長続きするというわけですね。
ただし、子供の行動を無理に抑えつけたりし続けると、好奇心そのものを失う危険もないとはいえません。

学習行動のいろいろ

条件反射による「古典的条件づけ」
人間の学習行動のメカニズムを、はじめて科学的に考えたのがロシアの生理学者パブロフです。
彼は犬にベルの音を聞かせると同時に、餌を与えるという実験を繰り返しました。すると、やがて犬はベルの音を聞くだけで、出すようになりました。パブロブはこれを「条件反射Lと名付け、ある特定の条件のもとで受け身的に身についた学習であると考えました。この条件反射が用いられた学習を、「古典的条件づけ」といいます。

道具による「オペラント条件づけ」
アメリカの心理学者スキナーは、自発的な行動と反応による学習効果を証明しています。レパーに触れると餌が出るボックス(実験装置)にネズミを入れると、偶然レパーに触れて餌を食べられたネズミは、しだいにお腹が空くとレバーを押すという学習行動を示すようになります。レバーを押しても餌が出なければ、この行動はなくなることがわかりました。
レバーという道具を押す動作が条件になっているため「道具的条件づけ」、またはネズミがたまたま行なった自発的行動という意味で「オペラント条件づけ」と呼ばれています。

人間は常に五感(視覚、聴覚、触覚、嘆覚、味覚)を働かせてあらゆる情報を取り込んでいます。例えば、あなたが自分の方に向かって猛スピードで近づいてくるオートバイを見たら、ひかれないよ うに避難するでしょう。これはごく当たり前の行動です。この当たり前の行動をとるまでに、人間の行動にはどのようなメカニズムが働いているのでしょうか。

人間の視覚はオートバイに当たる光が反射して目に映り、この目に映った像が神経を伝わって大脳の視覚中枢に届き、オートバイだとわかるわけです。ここまでは「感覚」の分野です。次に、オートバイだとわかったときに、どのような行動をとるかは「知覚」の働きによります。

実は、私たちは現実の周囲の環境を、そのまま受け止めているわけではありません。今までの経験やそのときの心理状態などによって知覚が働き、その情報が重要かそうでないかを選択して認識し、そして行動に移しているのです。
ですから、同じ絵を見ても、自分が感じることと、他人が感じとっているものが全然違うということが起こるわけです。また、自分の経験が加わって見たり感じている環境と、実際の環境にはズレが生じているともいえます。ものを見たり聞いたりする知覚は、心と深い関係にあるのです。

 
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